先週はキリストが死の中からよみがえられたイースター、復活の日でした。その八日後にイエス様は再び弟子たちの中に現れました。そこには弟子のトマスもいたのです。
彼の復活のキリストとの出会いは私たちに大切なことを教えます。
１，トマスの疑い
イエス様が復活されたイースターの日に彼は他の弟子たちと一緒にはいませんでした。その理由は聖書には記されていません。しかし後で弟子たちが「復活の主を見た」と言っても信じませんでした。
24節にはデドモと呼ばれるトマスとあります。デドモとはギリシャ語で双子という意味です。ですから、彼は双子だったのでしょう。しかし、もう一人の兄弟がどうであったかは聖書には記されていません。ある学者は、彼の人格の中にもう一人の人格があったのではないか、彼は双子と言うよりも二心（ふたごころ）だったという人もあります。
彼は、最初から主を疑うような人ではありませんでした。ヨハネの11章を見ますと、ベタニヤ村のラザロのことが出てきます。エルサレムの近くにありそこに行くのは危険でした。ユダヤ人たちに石で打ち殺される危険がありました。イエス様はそれでも行くと言われたのです。おそらく弟子たちは行くのを躊躇していたでしょう。しかしトマスは違いました。「私たちも行って、主といっしょに死のうではないか」（11：16）と尻込みする弟子たちを引っ張って、主とともにベタニヤに行ったのです。
そしてもう一つの感心すべきことがありました。それはヨハネの14章です。イエス様はもうすぐ天国に行かれることを弟子たちに語られました。おそらく彼らは理解できなかったでしょう。その時にトマスだけははっきりと「主よ。どこへいらっしゃるのか、私たちにはわかりません」（14：5）とイエス様に疑問を投げかけたのです。イエス様は疑問を投げかけること、すなわち分からないことをはっきり尋ねることを責められません。ですから、私たちは分からないことは、分からないとはっきり言っていいのです。疑問を投げかけてもイエス様は決して責められることはありません。
イエス様が責められるのは、疑問に思うことではなく、信じようとしないかたくなな心を責められるのです。ですから私たちは分からないことははっきりと尋ねるべきです。
このトマスの疑問はイエス様のすばらしい答えを引き出しました。「わたしが道であり､真理であり、いのちなのです」（14：5）と自分が天国への救いの道であると答えられたのです。
２，トマスに対するキリストの愛
トマスはある意味、現実主義者・実証主義者であったと思います。自分の手で触ってみなければ信じられない。私たちも同じ思いを持つことだろうと思います。そして、それはそれで良いのです。信仰とは「鰯の頭も信心から」ではないのです。盲目的な信仰はむしろ危険です。私たちははっきりと理性でもって、体験的にもキリストの実態を知るべきであると思います。
イタリアのローマに「カタコンベ」と言われる巨大地下墓地があります。それは地下を掘り岩盤を削って巨大迷路のような地下道を幾層にも掘り進み、ローマの迫害下にあったクリスチャンたちはそこに潜んで礼拝をしたそうです。そしてまた250年にもわたって、キリストを信じる者は激しい迫害の嵐にさらされたのです。しかし彼らは信仰を守りとおしました。そのカタコンベには700万人のクリスチャンの遺骸が葬られているとも言われています。なぜ彼らはそのようにしてまで信仰を守ったのでしょうか。嘘や偽りでたらめなことに命をかけることができるでしょうか。彼らはキリストの復活を信じていたのです。その復活のために、命をも捨ててまで信仰を守り通したのです。
何とイースターから数えて八日目のちょうど日曜日、トマスは弟子たちとともに部屋の中にいました。するとイエス様が「シャローム（平安）」と言って彼らの中に現れたのです。それをトマスははっきりと見ました。イエス様は、わたしに触ってみなさいとやさしくトマスに語られました。彼はただ「私の主。私の神」と言うのが精一杯でした。
それがイエス様のトマスに対する愛であったと思います。あの疑り深い実証主義者のトマスには、御自身の体をもってでも現される。それがキリストの愛です。そして「信じない者にならないで、信じる者になりなさい」と言われました。
トマスは復活のキリストを信じる者になりました。伝説によれば彼はインドまで出かけて伝道し、多くの人に復活のキリストを宣べ伝え教会を建て、ついにはインドで殉教したと言われています。
私たちもまた、「信じない者にならないで、信じる者」となり、信仰によって私たちの心に復活の主を拝し、喜びと感謝をもって生きるものとさせていただきましょう。
（宣教者 柏原教会牧師 西本耕一）
