イエスの前にひざまずいたこの人はたくさんの財産を持っていたとあります。ということは、彼は周りから一目置かれ、敬われる存在であったということです。彼ほどの人なら立ったままイエスを呼び止めることもできたはずです。しかし実際は、貧しい人や病人がイエスさまに対してしたのと同じようにイエスの前に身を投げ出しひざまずいたのです。周りにいた人々はおそらく唖然としたでしょう。いったい何が彼をそこまでの行為に駆り立てたのでしょう。それほどまでに彼は癒されることのない渇きであり、恐れに人知れず苦しんできたということです。彼は会社やお金や土地などをたくさん持っていたかもしれませんし、さらに当時の宗教的といわれる行為もぬかりなく行っていたにもかかわらず、それでも彼は自分の生き方に確信を持てなかったのです。人生で成功すると、例えば会社の中で高い地位に就いたり、エリートコースを歩んで高額な収入を得られる職に就いたりすると、それだけで神に祝福されている証拠だと思い込みがちですが、そんなに単純な話ではないのです。そのような地位や職業にはそれに見合った大きな責任が課せられるのです。そのような人々に汚職、あるいは不倫といったスキャンダルが絶えないのは、いつしか地位や職のほうがその人を動かすようになり、自分が本当にはこの人生で何をしたかったのかがわからなくなるからです。そんな話は雲の上の人々の話だと思われるかもしれません。しかし、あなたはどうですか。私の持っているカードはこれしかないから、しょせん私の人生なんてこんなものとあきらめるのも同じことです。私の生き方に人々がイエスを垣間見る、そのようなあり方を御言葉から聞いてまいりましょう。
（宣教者：カナン宣教委員会主催の講壇交換 シオンの丘キリスト教会牧師 坂田 浩先生）
