ここにイエス・キリストが荒野でサタンの試みに会われることが出てきます。神の愛するひとり子であるならあえて苦しみに遭う必要がないと思いますがなぜこのような試練を受けられたのでしょうか。
１，弱い私たちを救うために
イエス・キリストの生涯は、ユダヤのベツレヘムの家畜小屋から始まりました。そしてヘロデ王の迫害を逃れてエジプトに下り、ユダヤに帰ってからもガリラヤのナザレに貧しい大工の子として成長されました。およそ３０才頃に公生涯に立たれました。その初めのことがここに記されています。
ヨルダン川でバプテスマのヨハネから洗礼を受けられ川から上がられると、天から「わたしの愛する子」と声があったのです。まさにそれはキリストが神のひとり子であることの証しでした。
しかし、すぐさま荒野に追いやられました。「御霊は」とありますが、それは神様がそうされたことです。サタンの試みに遭うことは神の御心であったのです。
最初の人間アダムとエバも、エデンの園で試みに遭いました。残念ながら、彼らはサタンの誘惑に打ち勝つことができなかったのです。私たちも、アダムとエバの性質を持っています。それは誘惑に負けてしまうことです。
「すべての世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、暮らし向きの自慢などは、御父から出たものではなく、この世から出たものだからです。」（?ヨハ 2:16 ）と聖書の中には、サタンから攻撃されやすい私たちの弱点が書かれています。
最近「ぎょうさん買うたろう！商品券」が発売されました。買った人もいると思います。ただつい買いすぎて、期間内に使えきれずに逆に損をした人もいるようです。そのような誘惑もあります。
私たちには、そんな弱さがあり失敗してしまいます。その私たちを救うためにキリストは来られたのです。私たちは失敗するとみじめな気持ちになります。孤独を感じ、気分も落ち込んでしまいます。そんな私たちに実は救い主イエス・キリストがおられるのです。
聖書の中に「私たちの大祭司は、私たちの弱さに同情できない方ではありません。罪は犯されませんでしたが、すべての点で、私たちと同じように、試みに会われたのです。」（ヘブル 4:15）と私たちをあわれみ、受け止めて下さる救い主イエス・キリストがおられることを教えています。
このキリストが私たちを受け止め、また私たちの心の傷をも癒して下さるのです。
２，神の言葉によって勝利する
ここでの出来事は、マタイの福音書にさらに詳しくでています。４０日間断食され、サタンが試みました。石をパンに変えるようにと言いましたが、そうはされませんでした。逆に「人はパンだけで生きるのではなく、神の口からでる一つ一つのことばによる」と言われたのです。それは旧約聖書（申命記8:3）の御言葉でした。神のことばは私たちの心に力を与えサタンの誘惑さえも打ち破る力があるのです。
ですから、自分は心が弱い、強くなりたいと願うなら神のことば聖書の言葉によって私たちは自分の弱さに、またサタンの試みに勝利することができるのです。
それ故にイエス・キリストがなされたのは14節にあるように「福音」を宣べ伝えることであったのです。福音とは文字通り「良い知らせ」Good Newsです。それは、イエス・キリストが私たちの犯した罪過ちを代わりに負い、十字架の上で血を流し、いのちを捨てて私たちを赦して下さったことです。それによって私たちのすべての罪は赦されます。もはや失敗したことの、後悔の念や、自分を責めることや、自分を恥じることからも救われるのです。十字架には私たちの失敗をゆるす力があるのです。「あなたの過ちは、わたしが赦します」とイエス・キリストは宣言されるのです。
３，キリストに立ち返る
イエス・キリストは「時が満ち、神の国は近くなった。悔い改めて福音を信じなさい」（15節）と語られました。その時多くの人は苦しみと困難の中にあり、救い主を待ち望んでいました。神の国の到来を待ち望んでいたのです。神の国とは何か、それは神が支配される所です。
かつて東ドイツのベルリンで西側に逃げ込む人が多くなり、壁が作られました。しかし、それもついには崩されました。多くの人は自由を求めています。
私たちの心の自由はどうでしょうか。肉の欲、目の欲、自慢する心に負けてしまう。支配されていないでしょうか。神の国とは、そうしたものに勝利し、神が私たちの心の中に座して下さり、守って下さることなのです。
そのためにキリストは私たちの所に来て下さったのです。そのためには、私たちはまず「悔い改める」まず方向転換することです。キリストに向きを変えることです。そして福音を信じる。イエス・キリストが私のために十字架に掛かり、すべての罪を赦して下さった。このことを信じることです。そうするならば、私たちは罪から解放されます。そしてサタンにも打ち勝つことができるのです。私たちもまたキリストのように、誘惑に打ち勝ち、神の国に生きるものとなれるのです。
（宣教者 柏原教会牧師 西本耕一）
